十六島海苔(うっぷるいのり)は、島根県出雲市十六島町で採られる天然の岩海苔です。その歴史は古く出雲国風土記にも伝えられています。奈良・平安時代には朝廷に贈られたといい、江戸時代には将軍への献上品に用いられるなど珍重されてきました。
この海苔は出雲地方で、正月の雑煮に入れて食されてきました。醤油で味付けした出汁で餅を煮て十六島海苔を浮かべると、豊かな磯の香りが広がります。
収穫は寒風吹きすさぶ時期、日本海の波が打ち付ける岩場で手摘みされます。この岩場の多くは先祖代々、漁師の家々に伝えられてきたもので、良い海苔が付くように手入れをし守られてきました。
12月下旬、樋野峯夫さんの所有する岩場では、絨毯のように張り付いた海苔を摘み取る作業が続いていました。高級海苔の一つと言われる十六島海苔は、磯の香りが高く弾力があり、紫がかった黒い色が特徴です。良い品質のためには、強い季節風と厳しい寒さが必要だといいますが、同時に収穫作業の厳しさも物語ります。旬は12月から2月頃まで。生産量が限定される希少品です。