島根県と鳥取県にまたがる汽水湖の中海で、赤貝と呼ばれるサルボウガイの水揚げが最盛期を迎えています。松江市美保関町にある中海漁協の作業場では、消費者に地元産の赤貝を楽しんでもらおうと、ひとつひとつフジツボなどの付着物を取ったり、大きさを選別して出荷準備が進んでいました。
昭和30年代に約1600トンの水揚げがあった中海の赤貝は、干拓事業や汚水などによる環境悪化で絶滅寸前に追い込まれました。干拓事業は平成12年に中止されましたが、漁業者などによるとその影響は消えておらず、水産物はあまり増えていないといいます。
県水産技術センターによると、干拓工事などでできた湖底のくぼ地や汚水による富栄養化などにより、夏場を中心に湖底付近の貧酸素化が起きていて、湖底に生息する貝類などが脅かされています。
中海の環境改善には、まず人間が出す汚濁物質を減少させる下水道や廃水処理施設などの整備が不可欠。
また、私たちひとりひとりも汚れた水を出さないように心がけることが大切です。
島根県では、平成10年代後半から県水産技術センターと中海漁協が、稚貝をかごに入れ、酸素の豊富な湖の中層に吊るす養殖に取り組み、平成25年に出荷を再開させました。今季は昨シーズンより約1トン多い8トンの出荷を見込んでいます。中海産赤貝の価格は県外産の3倍ほどと高値ですが、販売する道の駅本庄では、肉厚で味が良いとリピーターも多く、早い時には販売開始後1時間ほどで売り切れるということです。
赤貝は、かつて中海の冬の風物詩として食卓にのぼってきた食材であり、おせち料理の食材としても親しまれてきました。砂糖や醤油で甘辛く焚いた赤貝は、酒の肴にぴったりです。
赤貝の養殖に携わる中海漁協の組合員・石倉さんは、養殖はコストがかさんで利益は少ないが、地域の期待に応えていきたいと話していました。