正月の松飾りやしめ縄などを焼く、とんど焼きの季節です。日本海に面した松江市美保関町片江地区では、見物客も巻き込んで顔に墨を付け合うユニークな神事「墨付けとんど」が、1月6日に営まれました。
「墨付けとんど」は魔除けのおまじないだという「墨付け」が特徴で、無病息災や大漁を祈願する新年の神事として、250年以上続いています。
地区の氏神様である方結神社に集まった墨付け役の女性たちが、粉末にした炭を御神酒で溶いた後、男性たちが担ぐ神輿が神社から繰り出し「チョーサダ―、チョーサダ―」と独特の掛け声を響かせて地区を練り歩くと、それに続く墨付け役の女性たちが住民や見物客などの顔に墨を塗って回りました。
墨を付けられると1年間は風邪をひかず、海難にも遭わないと伝えられ、墨は多く付くほど御利益があるとされます。
神輿が、とんど飾りの周囲を回ると神事はクライマックスへ。神輿は担ぎ手ごと海へ入り身を清めると、習わしに沿って、結婚や新築など祝い事のあった家の男性を海に投げ込んで祝福。普段は静かな港町が、にぎやかな声に包まれました。
以前は1月7日に行われていた神事ですが、担い手不足の心配などから現在は1月6日以降の最初の日曜日に営まれています。神事に合わせて毎年、兵庫県から帰省しているという男性は「伝統ある神事を守り伝えていきたい」とふるさとへの思いを話していました。