島根県にはその風土に培われた豊かな食文化があります。磯で採れる「ぼべ貝」を使った家庭の味「ぼべ飯」もその一つです。
「ぼべ」とはカサガイ類の巻き貝で、島根県西部での呼び名です。岩に張り付いた小さな貝を採るのは大変ですが、この貝の旨味を余すことなく炊き込んだ「ぼべ飯」は、夏を感じさせるごちそうです。
大田市仁摩町の山根さん夫婦は、故郷の海辺で食堂「鞆(とも)の銀蔵(かなぐら)」を営み、ぼべ飯を振る舞っています。
店から望む美しい海と、郷土の味を味わってもらいたいと山根さんは話します。
ぼべ飯は夫婦で協力して調理。貝をゆでた後に身と殻を選別しますが、貝のカケラなどが混ざっているため手作業で丁寧に取り除くため、提供できる量には限りがあります。
味付けは、しょうゆ・酒・みりんなど。身と肝を一緒に炊き込むので、その旨味が凝縮しています。
炊きあがったご飯はしょうゆと磯の香りに満ちていていました。
山根さんのお母さんも、よくぼべ飯を作ってくれたと言います。ぼべ飯は県内の海沿岸に伝わる家庭の味です。磯で採った貝を家に持ち帰り、炊き込みご飯にして食べるのが一般的です。懐かしく海の香り豊かなぼべ飯は、守り伝えていきたい故郷の味です。
鞆の銀蔵(とものかなぐら)島根県大田市仁摩町馬路1830-6