島根県大田市で世界遺産・石見銀山遺跡と海の関わりを感じるイベントが、7月29日(土)に開催されました。このイベントは、B&G琴ケ浜海洋クラブが石見銀山遺跡の世界遺産登録10周年を記念して開催し、県内から約20人が参加しました。
石見銀山遺跡は銀が採掘された鉱山が注目されますが、銀を積み出した港もまた世界遺産に指定されています。今回のイベントは、海上から石見銀山遺跡を感じることで、その価値を再認識してもらおうというものです。
参加者は船に乗り同市仁摩町の鞆ケ浦を出発。ここはかつて世界に流通した石見の銀を積み出した港で、石見銀山の構成遺産です。参加者はその西方約2kmにある同市温泉津町の“幻の港”古龍(こりゅう)遺跡を目指しました。古龍は世界遺産に指定されているエリアではありませんが、16世紀に銀の積み出しで栄えた港と推定され、その賑わいは「古龍千軒」と称えられたということです。
途中、海岸線の洞窟や奇岩を楽しんだ参加者たちは古龍の港に到着しました。そこは深い入り江に、船を係留するための鼻ぐり岩が残されています。きっとたくさんの船や人が行き来していたことでしょう。しかし他港の整備や支配者の変化とともに衰退し、戦国時代以降は文献などに現れなくなりました。そして昭和40年代初めに廃墟になったことから“幻の港”と言われてきました。今は住居跡と思われる石垣や井戸があるだけです。
コンクリートの岸壁などはなく、中世の面影を残した海岸が目の前に広がります。参加者はゆったりとした時の流れを感じていました。
大航海時代、世界に輸出されていった石見の銀。歴史の表舞台から過ぎ去った古い港で、海を介して日本と世界をつないだ痕跡を感じる機会となったようです。
写真提供:B&G琴ケ浜海洋クラブ